AKANE -もう一度、逢いたい-


「茜ちゃぁ~ん!」


ドア越しに聞こえる大きな声。


「明音ちゃんだよね。
探してるんじゃ…」

「いいからほっといて」

「茜ちゃん!
今度はクラスの手伝いだよ~」

「クラスの手伝いは
行った方がいいんじゃ…」

「だから、ほっといて。
面倒くさいから」

「早く出てきてよ!じゃないと茜ちゃんをミスコンに推薦しちゃうよ」

「ああ、もう!」


仕方なさそうに、ドアの方に向かう。


「茜、頑張って」

「頑張らない」

「俺もお化け屋敷に
絶対に遊びに行くから」

「…絶対に来ないで。
もしも来たら殴るから」

「あはは、茜のは
冗談に聞こえないって」

「…冗談じゃない」


まだまだ遠くで明音の呼ぶ声が聞こえてくる。


「貴之」

「ん?」

「優しさって
どうして辛いんだろうね」

「…え?」


茜は意味深な言葉を残して行ってしまった。


優しさに触れることがどうして辛さになってしまうのか。


まだこの時には知らない未熟者。


これは俺に対する忠告だって気付くことになるなんて思わなかった。


それがまた彼女を苦しめる原因になるとも。

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