AKANE -もう一度、逢いたい-


あたしはそのまま教室に戻ろうと向かっていた。


文化祭ももうすぐで、学校中の誰もが楽しそうにしていた。


ザワザワと文化祭の準備でどこのクラスも忙しそうだ。


(よく頑張るよな)


けれども、辛いってことは誰も言わず、嬉しそうな顔をしていた。


みんな、無邪気な表情ばかりだ。


(こんなこと、
何の意味もないのに…)


その中に聞こえてきた密かな声。

あたしは思わず階段裏からこっそりと身を潜めた。


「…ウザイよね」

「分かる、分かるぅ!」


あたしはさらに耳を澄ました。


「あの“あかね”って奴
どういうつもりなの?」


ズキンとした。

と同時にまたあの記憶が蘇り始める。


また息が苦しくて、呼吸が出来なくなりそうだった。


ハァハァハァハァ…

『死ねばいいのに』

『――くんが、かわいそう』


(…あたしは、
ここでもダメだった!!)


さらに身を小さくする。

息は荒くなり、これ以上ここにいたくないあたしはすぐに逃げ出した。


思い出す恐怖で苦痛の毎日。

頭がガンガンに響く。

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