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「聞いてくれてありがとうございます!!みんな入ってね!!」



演奏が終わり、ボーカルの人が挨拶をした。



でも・・・ギターの人が見あたらない。



ちょっとガッカリだなぁ・・・。




「おはよ」


「うわぁっ!!」




びっくりしたー!!



心臓がバクバクいってる。





「こっちが、うわっ、だよ・・・」


「あ、ごめんなさ・・・・・・あ・・・あなた・・・は・・・」





耳を押さえて、困ったように笑顔でいる。



さっきギターを演奏していた人に違いはなかった。




「ごめんなさい、まさか、後ろに人いるとは思わなくてっ・・・」



「いいよいいよ、俺が悪いんだし・・・それよりキミ、さっきここ入って来た時、珍しいものでも見るような顔してたね」




え、見られてた!?



恥ずかしい・・・




「・・・初めてだったから・・・こういう世界観」




今まで、ピアノの世界でしか生きてこなかった。



ピアノ以外見ていなかったし、見せてくれなかった・・・




するとその人は、不安を消すかのように言った。



「へぇ~、初めてなんだ。でも、ここ初めての子も多いから大丈夫だよ」



「え、そうなんですか?」



ベテランだけじゃないんだ・・・ちょっと安心。



「うん。まぁ、また見においでよ。毎週水曜にやってるから。じゃ、またね!」



その人は笑って手を振りながら、戻ろうとした。



あ、行っちゃう・・・えと・・・



「あの!!」



気づけば、声をかけていた。



また、その人が振り向く。



「ん?どしたの?」



「えと・・・・私も、貴方みたいに・・・なれますか?」



さっき弾いている姿を見て、かっこいいと思った。



ステージで弾いているあの人がキラキラ光っていて・・・



私も、ステージで弾いてみたい、あの人みたいになりたい・・・



そう思った。





無理かも知れない。





でも・・・・





ささいな希望を抱いて、聞いてみた。




その人は、一瞬驚いた表情をしたけど、




「なれるよ。俺がそうしてあげる」




と、眩しい笑顔で言った。



私も、それにつられて笑った。






・・・決めた。



私は、この道に進む・・・



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