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「どうしてこんなのも弾けないの!!!」
「ご、ごめん・・・なさい・・・」
「そんなふうに育てた覚えはないわよ!!もう一回!!」
小学校にあがってから、賞はとれなくなっていた。
結果発表が終わって、会場をあとにし、家に着いた瞬間・・・
お母様の罵声が飛ぶ。
会場で言わないのは、お母様のイメージが下がるから。
『有名ピアニスト』というのを壊したくないだけ。
賞をとれなかった日は地獄。
昼頃に終わり、帰って、夜まで練習。
間違えて、怒られる。
泣いて、怒られる。
合っていても、何でさっきできなかったの!?、と怒られる。
怒られない、なんてない。
そして、小3の夏のコンクール。
「金賞は、時輪 奏さん!」
呼ばれて、嬉しいなんて思わなかった。
家に帰って言われる言葉なんて、一つだけ。
「あそこは、もうちょっとテンポ良くするべきね」
いつしか、あたしから"笑顔"は消えていた。