across

パンパンっ



お母様が打つ、ストップを意味する手拍子で我に返った。



お母様のほうを向く。



「あなた、今違う事を考えていたでしょ?」



あ・・・



しまった。



何も考えないようにしていたのに。



「すみません・・・」



一礼して言った。



「ったく・・・この私が教えているというのに。音楽以外の事は考えなくていいの。わかる?」



「はい・・・」



「じゃあ続きを。1、2・・・」



音楽以外の事は考えなくていい・・・



無理でしょ、どう考えたって。



音楽なんて・・・



「違う違う!!もう一回、1、2・・・」



ポロン・・・



「だから違うって何度言ったらわかるの!?私の言うとおりに動かしなさい!!」



その瞬間、あたしの何かが崩れ始めた。
< 5 / 12 >

この作品をシェア

pagetop