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「もう一回、1、2・・・」
「・・・」
あたしは、お母様の声がかかっても、鍵盤に手は置かなかった。
鋭い目線を感じた。
言う事なんて分かってる。
どうせ、『どういうつもり!?』とかでしょ?
聞き飽きたし。
「あなた・・・どういうつもり!?」
やっぱり・・・
「ふふっ」
「あんた、何がおかしいの?・・・さっさと弾きなさい!!」
「いいえ、貴方のおっしゃる言葉がいつも同じだから、また今回も言うんじゃないかって予想したら・・・全くその通りでおかしくって、笑ってしまいました」
あたしは口角をあげたまま言った。
これには、お母様もご立腹。
「あんた、何様のつもり!?」
・・・少し前まで、感情を殺しておけばいつまでも耐えられると思ってた。
ちょっと溜まりすぎたのか、ポンポン本音が飛び出す。
「私の言うとおりに動かしなさい・・・まるで、壊れた機械に言うみたいだね」
「何寝ぼけたこと言っているの?」
「口を開けば、そこは違う、ちゃんとしろ、そんな簡単なこともできないの!?・・・褒めた事なんてあった?」
「いつからこんな娘になったのかしら。さっきの続きから、1、2・・・」
あたしの言うことに耳も傾けない。
もう、いいや。