ワンだふる·ワールド10~ワンコの新居~《TABOO》
引っ越してから数日経ったある日。
近くのスーパーに行くと、隣人の男が彼女と仲睦まじく買い物をしている。
温和で大柄な彼は、グレート ピレネー。
こちらに気づいた彼が軽く会釈した。
ハチに説明すると、
「何だよ、男じゃないか」
とグズグズ拗ねだした。
婚約してからというもの、妙に警戒心が強いハチ。
どうやら、会社の同僚に彼女のマリッジブルーに気をつけろと吹き込まれたらしい。
――まったく、余計な事を…
煩わしささえ感じ始めた今日この頃。
2人の空気もどことなくおかしい。
買い物から帰ると、気分転換に1人で出掛けることにした。
ハチはというと…日課の炊事を淡々とこなしている。
――ほっとくと、浮気しちゃうぞ
と柄にもなく乙女チックに一瞥したが、ハチはキッチンから出てこない。
フンと鼻を鳴らして、ドアを閉めた。