ワンだふる·ワールド10~ワンコの新居~《TABOO》
家を出たはいいが、慣れない街で行く宛もない。
フラフラと徘徊していると、前から歩いてくるのはまさかのピレネー。
ワザとらしく食器を探していると嘘を吐くと、オススメの店へと案内してくれた。
優しいだけじゃなく、頼りがいもありそうだ。
――ハチもこんなダンディーだったら…
と切ない妄想が駆け巡る。
とそこへ息の荒いハチとバッタリ出くわした。
尾行?と思いきや、調味料を買い忘れて慌てて走ってきたらしい。
じゃれあう2人を見て、言葉を失うハチ。
完全に勘違いモードだ。
「待て!」
と走り去るハチに叫んだが届かず。
苦笑いのピレネーに頭を下げて、仕方なく後を追った。
恐る恐るドアを開けて見ると、ショボーンと肩を落としてソファーに座るハチ。
散々説明を繰り返して、ようやく疑いは晴れて納得してくれた。
が、笑顔でキッチンに向かうハチに、心の中で謝罪する。
――ごめん、ハチ
――二軒隣りのチャウチャウは、もう抱っこしてあげたのよ
END