◇桜ものがたり◇
序
私の名は、榊原(さかきばら)祐里(ゆうり)。
三歳の時に父母を山崩れで亡くし、
桜河のお屋敷で暮らすことになった。
母は、私を産むまでの数年間、
桜河のお屋敷の手伝いに通っていたこともあり、
旦那さまが孤児(みなしご)の私を引き取ってくださった。
祐里の『祐』は、光祐さまの『祐』。
父母がお屋敷のご長男であらせられる光祐(こうすけ)さまに肖って、
私に祐里と名付けたと、後に婆やの紫乃(しの)さんから聞いた。
お屋敷での私の仕事は、光祐さまの遊びのお相手だった。
果たして、三つ年下の私に
光祐さまの遊びのお相手が出来ていたのかは、
今思えば疑問だが、私は真摯に仕事を全うした。
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