◇桜ものがたり◇
手紙からは、仄かに祐里の香りが立ち、気分が和らぐ。
手紙に同封された茜色の落ち葉は、祐里の笑顔を写して心を温かくした。
光祐さまは、くるくると落ち葉を指で回してから、
部屋の窓辺の目に付く所に飾った。
不思議なことに茜色の落ち葉を見ていると、
お屋敷の自室のバルコニーで、
祐里と一緒に居る気分になれるのだった。
茜色の落ち葉は、秋の陽射しを受けて、
祐里が微笑んでいるかのように感じられた。
「祐里、もうすぐ帰るよ」
光祐さまは、声に出して落ち葉へ話しかける。
「光祐さま、楽しみにお待ち申し上げます」
すると祐里の声が返ってきたように感じられた。