◇桜ものがたり◇

 祐里は、御婆さまの仏壇にも桜の落ち葉を供えた。


「おばあさま、落ち葉の季節になりました。

 錦のように綺麗でございます。

 お供えいたしますので、ご覧くださいませ」

 祐里は、御婆さまの遺影に話しかけて手を合わせる。


 閉じた瞳の中で御婆さまの優しい笑顔が蘇っていた。





 祐里は、柾彦や女学校の同級生にも、栞として桜の落ち葉を贈った。


 一片(ひとひら)の落ち葉は、贈られた人々を

 不思議としあわせな気分にさせる。



 柾彦は、お気に入りの本に落ち葉を挟み、

 常時手元に置いて大切にした。



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