◇桜ものがたり◇
「どうだね、光祐。現在(いま)の気持ちを言ってみなさい」
読み終えると、旦那さまは、満面の笑みを湛(たた)えて、
既に答えは分かっていると頷きながら、光祐さまに問いかける。
「父上さま、驚かさないでください。
電報の祐里の結婚相手は、私だったのですね。
私は、結婚相手は、祐里しかいないと、
子どもの頃から決心していました。
父上さまは、いつも祐里は妹だとおっしゃっていましたが、
大学を卒業して一人前になった時点で、
祐里と結婚したいと、父上さまに申し上げるつもりでおりました。
私の妻は、祐里の他には考えられません。
私は、祐里と結婚して桜河の家を大切に守っていきます」
光祐さまは、祐里の手を取り、しっかりと旦那さまに返答する。
溢れんばかりのしあわせを感じて、祐里は、言葉を失っていた。
「やはり、光祐は、祐里のことを想っていたのだね。
灯台下暗しだったというわけだ」