◇桜ものがたり◇
祐里のはなしに優祐と祐雫は、目を輝かせながら聞き入っていた。
「母上さま、その桜の樹が、この樹でございますか」
祐雫は、桜の樹を見上げて祐里に問いかける。
「さようでございますよ。
曾御婆さまが、よく父上さまと私に、このおはなしをしてくださいました。
優祐さんも祐雫さんも桜の樹を大切にいたしましょうね」
祐里は、濤子御婆さまが、幼い光祐さまと自分をこの桜の樹の下で、
優しく抱きしめてくれたように、優祐と祐雫を一緒に抱きしめる。
「ぼくは、母上さまの次に桜の樹が大好きです」
優祐は、祐里の胸の中で桜の甘い香りに包まれて呟く。
「祐雫だって」
祐雫は、優祐に負けじと、
大きな声を出して、祐里の胸に顔を摺り寄せる。
「ありがとうございます。
優祐さん、祐雫さん。桜の樹が枝を揺らして喜んでございますよ。
私は、可愛い優祐さんと祐雫さんが大好きでございます」
祐里は、満開の桜と共にしあわせ満開の心地に浸る。