◇桜ものがたり◇
十八の春、
めでたく光祐さまと婚約し、ますます美しく輝いた姫。
手の届かない女性だと解っていながら、
柾彦のこころは恋する気持ちで溢れていた。
それからも、高等学校を卒業するまでの一年間、
柾彦は、ずっと守人として側で姫を見守り続けた。
大学時代は、
離れた里から
「素晴らしいお医者さまになられますようにお祈り申し上げます」
と、手紙で励ましてくれた姫。
光祐さまの妻となった現在でも、
柾彦は、姫以外の女性は考えられなかった。