◇桜ものがたり◇
恋慕
毎週水曜日の午後、
祐里は、鶴久病院の入院患者を見舞う奉仕活動をしていた。
以前に祐里が、知人の見舞いに訪れた病室で
『祐里さまが病室にいると、気分がよくなり痛みが和らぐようだ』
という入院患者の声を聞きつけた結子が、試しに祐里に依頼したところ、
不思議なことにどの病室からも歓迎されたのだった。
祐里は、入院患者が楽しみにしているのを知り、喜んで見舞っている。
「ご機嫌いかかでございますか」
祐里は、病室を廻り、手を握ったり、痛いところを撫でたりして、
ひとりひとりに優しく話しかける。
祐里の慈悲のこころは、入院患者を元気付け、
しあわせな気分にしていた。
その評判は、口伝てに広がり、
鶴久病院の受診患者は、ますます増えていた。