◇桜ものがたり◇
 
 その夜、

 子どもたちが就寝してから、光祐は、祐里に優しく声をかけた。


「祐里、何かあったの」


「いいえ・・・・・・何もございません。

 光祐さま、祐里は、いつもと違うてございますか」

 祐里は、普段通りに振る舞っていたつもりが、

 光祐に気付かれたことに困惑する。


「いや、いつもの祐里だよ。

 何もなければそれに越したことはないけれど、

 ひとりで辛い事を抱え込む性分の祐里のことだから、

 心配事でもあるのかと少し感じたものだから」


 祐里は、静かに光祐の肩に頭を擡げて寄り添う。


「ぼくの大切な祐里だもの、誰よりも祐里のことは分かっているよ。

 ぼくは、いつでも祐里を信じて見守っているから、

 祐里が信じる道を行きなさい」

 光祐の言葉からは、深い愛情が感じられた。


「祐里は、光祐さまのお側に居させていただくだけで、

 しあわせでございます」

 祐里は、こころがしあわせで、満たされていくのを感じていた。


「ぼくのしあわせは、祐里がしあわせでいてくれることだよ」

 光祐は、それ以上は何も追及せずに、

 祐里の肩に手をまわして、力強く抱きしめる。


 祐里は、光祐の愛に包まれて自信を取り戻していた。


(光祐さま、祐里は自身を信じて、

 そして、柾彦さまを信じて、

 いままで通りのお付き合いをして参ります)

 と、こころに誓う。




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