◇桜ものがたり◇
「ただいま、母上。雫姫も一緒なのだけれど」
「こんにちは。
おばさま、おいしそうな匂いに釣られて来てしまいました」
玄関の扉を開けると、昼食の美味しそうな匂いが立ち込めた。
「お帰りなさいませ、柾彦さん。
祐雫ちゃん、いらっしゃいませ。
ちょうどよかったですわ。
お昼を作りすぎてしまって困っていたところでしたのよ。
祐雫ちゃんのお鼻は、よく利きますのね」
結子は、祐雫の鼻に軽く手を当てる。
「また、姫に内緒で来ているから、母上、電話を入れてください。
姫が心配している頃だろうから」
柾彦は、まずは祐里を心配する。
「はい、はい。祐里さんを心配させてはいけませんものね」
結子は、祐里に電話をかけてから、昼食を食卓に並べた。