◇桜ものがたり◇

「柾彦さん、祐里さんがよろしくお願いしますとのことでした。

 祐雫ちゃん、どうぞ、たくさん召し上がれ」

 結子は、早く祐雫のように可愛い孫が欲しいものだと感じる。


「いただきます」

 祐雫は、桜河のお屋敷の料理は、和食が多いので、

 結子の作る洋食が大好きだった。

 
「優祐くんは、家に戻ったの」


「はい。午後から、剣術のお稽古でございます。

 優祐は、母上ご自慢のよい子でございますもの」

 祐雫は、優祐の従順さを揶揄する。


「まぁ、祐雫ちゃんがお姉さまのようですわね」

 結子が声高に笑う。


「おじいさまが、優祐を兄とお決めになられたので、

 祐雫は妹でございますが、双子なので、

 祐雫が姉でもよろしゅうございましたのに」

 祐雫は、口を尖らせる。


「雫姫は、ご機嫌斜めだね。何かあったの」

 柾彦は、食事を終えて、祐雫を居間の長椅子に座らせた。

< 154 / 284 >

この作品をシェア

pagetop