◇桜ものがたり◇

「そのようなことはないだろう。

 祐雫のことを一番心配しているのは、母上だよ。

 母上は、心配を表情に出さないひとだからね。

 それに、手伝いは、勉強と同じように、

 生きていくためには、大切なことなのだよ。

 母上は、祐雫だけでなく、優祐には、他の手伝いをさせている。

 祐雫は、これから様々な体験をして、

 日々成長していくのだから、何も焦ることはない」

 光祐は、自己主張をするようになった祐雫の成長を感じていた。



「御爺さまも、御婆さまも、優祐も、婆やも、爺も、母上さまのことばかり。

 祐雫のことなんて誰も気にしてくださらない」

 祐雫は、更に口を尖らせた。


「なんだ……、祐雫は、母上にやきもちをやいていたのか。

 ほら、そのような顔をしていると可愛い顔が台無しだよ」

 光祐は、幼さの残る祐雫の肩に手をまわして、抱き寄せてから、

 瞳を見つめて話をする。

 祐雫が、やきもちをやく年頃になったことを微笑ましく感じた。



 

< 157 / 284 >

この作品をシェア

pagetop