◇桜ものがたり◇
「そのようなことはないだろう。
祐雫のことを一番心配しているのは、母上だよ。
母上は、心配を表情に出さないひとだからね。
それに、手伝いは、勉強と同じように、
生きていくためには、大切なことなのだよ。
母上は、祐雫だけでなく、優祐には、他の手伝いをさせている。
祐雫は、これから様々な体験をして、
日々成長していくのだから、何も焦ることはない」
光祐は、自己主張をするようになった祐雫の成長を感じていた。
「御爺さまも、御婆さまも、優祐も、婆やも、爺も、母上さまのことばかり。
祐雫のことなんて誰も気にしてくださらない」
祐雫は、更に口を尖らせた。
「なんだ……、祐雫は、母上にやきもちをやいていたのか。
ほら、そのような顔をしていると可愛い顔が台無しだよ」
光祐は、幼さの残る祐雫の肩に手をまわして、抱き寄せてから、
瞳を見つめて話をする。
祐雫が、やきもちをやく年頃になったことを微笑ましく感じた。