◇桜ものがたり◇
一途に祐里を大切に想う柾彦が、想い余って、
祐里を抱きしめていた場面に遭遇した時は、驚愕し苦悩した。
それも祐里が上手く切り抜けて、
それ以後も変わらぬ態度で、柾彦と接してくれていた。
「おばさま、私は、女学生の頃から今まで、
いつも柾彦さまに守っていただき、勇気づけていただきました。
私こそ、柾彦さまには、感謝してございます。
それに桜河は、弟のように柾彦さまを信頼してございますもの」
祐里は、柾彦がいつも優しく守ってくれたことを思い出しながら、
結子の手を取る。
「祐里さんは、本当に神さまのように、慈悲深くて謙虚でございますわね。
桜河のご家族は、嘸(さぞ)かしおしあわせでございましょう。
初めて祐里さんにお会いした時から、
私は、あなたを柾彦さんのお嫁さんにと思っておりました。
適(かな)わぬ夢でございましたけれど」
結子は、祐里を強く抱きしめた。