◇桜ものがたり◇
優祐は、光祐に八千代のことを報告して、
桜山への道案内の許可を申し出た。
「全く知らない方と二人だけでは心配だから、爺にお願いしてごらん。
桜山までの道は、ご年配の方の足では大変だろうからね」
光祐は、許可を出したものの旅の老人が気にかかる。
「はい、父上さま」
優祐は、光祐の許しを得て、森尾の車を使えることが嬉しかった。
「優祐だけでは、心配だから、祐雫も一緒に行って差し上げるわ」
祐雫は、わくわくして横から口を挟む。
「ご案内が終わりましたら、一度、お屋敷へお連れしてくださいませ。
山歩きでお疲れでございましょうから、ご休憩していただきましょう」
「はい、母上さま」
祐里は、胸の内がざわめいていた。
優祐を道案内に出してはいけないような気分になりながら、
それでいて、出さずにはいられないような宿命を感じていた。
胸の内のざわめきは何時までも治まらなかった。