◇桜ものがたり◇
「祐里、気になることでもあるの」
光祐は、寝室で、神妙な表情の祐里を気遣う。
「何故でございましょう。
あまりにしあわせ過ぎまして、空恐ろしゅうございますの。
光祐さま、どうぞ祐里を離さないようにしっかりと抱いてくださいませ」
ざわざわと押し寄せてくる不安に溺れそうになり、
祐里は、光祐の胸に縋り付く。
「しあわせは、多いに越したことはないのだから、
何も心配しなくとも大丈夫だよ」
光祐は、優しく微笑んで、怖がる祐里を力強く抱きしめる。