◇桜ものがたり◇


「祐里、気になることでもあるの」

 光祐は、寝室で、神妙な表情の祐里を気遣う。


「何故でございましょう。

 あまりにしあわせ過ぎまして、空恐ろしゅうございますの。

 光祐さま、どうぞ祐里を離さないようにしっかりと抱いてくださいませ」

 ざわざわと押し寄せてくる不安に溺れそうになり、

 祐里は、光祐の胸に縋り付く。


「しあわせは、多いに越したことはないのだから、

 何も心配しなくとも大丈夫だよ」

 光祐は、優しく微笑んで、怖がる祐里を力強く抱きしめる。


< 181 / 284 >

この作品をシェア

pagetop