◇桜ものがたり◇

 午後二時を回った頃に森尾の車が玄関の車寄せへ戻ってきた。


 光祐と祐里は、車の音を聞きつけて迎えに出る。


 車から降りた八千代は、祐里を見るなり驚愕の表情を見せた。


「そなたは・・・・・・」


祐里は、戦慄を覚えて、光祐の背中に隠れる。


「祐里をご存知なのですか」

光祐は、八千代と祐里を交互に見つめ、背後で震える祐里を気遣った。


 八千代は、祐里の元へ駆け寄ろうとした瞬間、

 長旅の疲れと心労でその場に倒れ込む。


 光祐は、八千代を背負い、客間の布団に寝かせた。



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