◇桜ものがたり◇

「そなたは・・・・・・」

八千代は、気がついて祐里を見つめた。


「祐里と申します。

 あなたは、いえ、お爺さまは、私を捜しに来られたのでございますね」


「祐里と申すのか。わしは、春樹の消息を確かめに来たのじゃ。

 だが、死んだのじゃな。

 死んでからも、あやつは、結界を張り巡らして、

 そなたを隠しておったらしい。


 それに何かの強い自然界の力が加わっておる。

 わしは、この地に来てから、体調が悪うなった」

 八千代は、祐里の手を通して癒しの力を感じていた。

 気分が少しずつ楽になってくる。


「確かに私の父は、榊原春樹と申しますが、

 私は、今では桜河の人間でございます」

 祐里は、光祐と婚約してからの

 十七年間のしあわせに想いを巡らせる。





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