◇桜ものがたり◇
「おお、桜じゃ。
強い力は、この地の桜の樹から発せられているのじゃ。
それにこの屋敷からも。余程、おまえを守りたいとみえるな」
八千代には、祐里を守って幾重にも張られた強い結界が見て取れた。
「榊原さま、もうすぐ、お医者さまが参りますので、
今日はこちらでゆっくりされてください。
お話はそれからでもよろしいでしょう」
光祐は、八千代の身体を案じた。
「突然に現れてこの体たらくだ。申し訳ない。
そなたが祐里の連れ合いだね。
祐里を大切にしてくれているのじゃな」
八千代は、光祐に微笑みかけて静かに目を閉じ、
祐里の優しい手の温もりに包まれて安らかな眠りに落ちていく。