◇桜ものがたり◇
光祐は、客間の灯りを消し、枕元の電燈に切り替える。
夜の静けさが客間を覆った。
「祐里は、何があろうとわたしの大切な妻です。
それで災いを被るのならば仕方の無いことです。
ただし、榊原家が存在しなければ、
祐里は生まれていなかったというのも事実です。
神の森が守り人の交代で荒れているのでしたら、
しばらく祐里をお帰ししましょう。
祐里の癒しの力と後を継がれる冬樹さまの力で、
神の森をお静めください。
そして、神の森が静まりましたら、わたしに祐里を帰してください。
三日後には夏休みになります。優祐を祐里の供に付けます。
わたしが付き添いたいのですが、
今仕事を離れるわけには参りませんので」
光祐は、祐里を離したくないと思いつつも、
八千代の顔を見つめながら、
帰さなければならないと決心した。