◇桜ものがたり◇
廊下から庭に下りて、深緑の葉を湛えた桜の樹へ向かうと、
桜の樹は、月の光に青く光り輝いて光祐を迎えた。
(桜、心配しなくても大丈夫だよ。
一度、祐里を神の森に帰しはするけれど、
必ず、祐里は戻ってくると、ぼくは信じている。
ぼくと祐里は、桜の下で、添い遂げる宿命で巡り合ったのだもの。
ぼくは、こころで念じて祐里を守るよ。
どうか祐里と優祐に力を貸しておくれ)
桜の樹は、葉を優しく揺らして頷いた。
光祐は、目を閉じて、静かに桜の葉音を聞いていた。