◇桜ものがたり◇
「祐里、時期が来たのだよ。
縁のない時は、こちらが祐里の親族をいくら捜しても、
見つからなかったのに、こうしてあちらから捜しに来られた。
それに病み上がりのお爺さまを一人で帰すわけにはいかないだろう。
優祐を連れて里帰りをするつもりで行って来なさい。
祐里の父上さまと母上さまの生まれ育った土地を
一度は見ておきたいだろう。
ぼくが付き添って行きたいのだが、どうしても今、仕事を
離れるわけにはいかないのだよ。
仕事が一区切り着いたら、すぐに迎えに行くからね」
光祐は、祐里のいない毎日を考えただけで空虚な気分になりつつも、
祐里の出生の謎が解け、神の森が、祐里を必要としているという
現実を受け止めなければならないと感じていた。