◇桜ものがたり◇
「光祐さまとご一緒に拝見させていただくお庭は、
御伽(おとぎ)の世界のようにございます。
天空のようでもございますし、深い海の底のようにも感じられます」
祐里は、光祐さまと並んでバルコニーに佇み、
幻想的な庭園の風情に感動していた。
光祐さまの横にいるだけで満ち足りたしあわせに包まれる。
「月の光を浴びて、祐里は、この桜の精のようだよ」
光祐さまは、風景に感動している祐里の横顔をみつめて、
優しく肩を抱き寄せる。
祐里は、静かに光祐さまへ寄り添い、
光祐さまの陽だまりのような温もりを感じていた。
ゆるやかに流れていた時間が、止まったかようだった。