◇桜ものがたり◇
「そなた、神の声が聴けるのか」
驚愕の表情で、榊原冬樹は、祐里の前に現れた。
昨夜遅くに兄・春樹の娘が着いたと、妻の雪乃から聞いていた。
その娘が朝の見回りをする冬樹の前に現れて、神の森と対話していた。
「おはようございます。冬樹叔父さまでございますか。
お初におめにかかります。桜河祐里と申します」
祐里は、深々とお辞儀をしてから、ゆっくりと冬樹をみつめる。
(冬樹叔父さまは、お父さまに似ていらっしゃるのかしら)
祐里は、冬樹の中に父の面影を見ようとした。