◇桜ものがたり◇
「もう、大丈夫のようだね」
光祐は、止血した美和子の指を確認した。
「床を片付けます」
美和子は、洗面室に雑巾を取りに行き、床に零れた紅茶を拭いた。
拭きながら白いブラウスから胸の谷間が覗く角度を取り、
若さが漲る肢体をちらつかせる。
光祐は、目のやり場に困り、ロッカーから上着を取り出した。
「桑津くん、
そのスカートでは、外を歩けないだろうから、車で送って行こう」
光祐は、遅い時間にもかかわらず、
手伝いに戻ってきてくれた美和子の心遣いを素直に感謝していた。
「お疲れのところ、かえって副社長にご迷惑をおかけしてすみません」
美和子は、神妙な表情を作って、光祐にぺこりと頭を下げ、
その瞬間、思惑通りの経過にほくそ笑む。