◇桜ものがたり◇
「祐里。
大層可愛らしい名前です。
お名前をいただいた光祐坊ちゃまに、
可愛がっていただけると嬉しいですね」
小夜は、祐里が生まれるまで、
手伝いにあがっていたお屋敷の
二歳になる光祐さまの乳飲み児だった頃を思い出していた。
奥さまは、産後の肥立ちが悪く床に伏していて、
婆やの紫乃と交代で、光祐さまの世話をした。
光祐さまは、利発で、
お屋敷の後継ぎに相応しい気品を持ち合わせていた。
「祐里は、しあわせになる子だよ」
春樹は、こころからそう思えた。
小夜は、にっこり笑って頷いた。
祐里は、すやすやと幸せ包まれて眠り続ける。