◇桜ものがたり◇

 夏休みの終わりが近付いていた。

 祐里と優祐が神の森へ出発して、連絡のないままひと月が過ぎていた。

 書き留めていた電話番号は、通じず、

 出した手紙は、宛先不明、で戻ってくる始末であった。


 桜河のお屋敷では、家族が暗い面持ちで毎日を過ごしていた。


 光祐は、仕事の段取りをつけて、夏の休暇を一週間作り、

 祐雫を連れて、神の森へ夜行列車で旅立った。


 神の森はこの時代と平行して存在しながら、

 神から選ばれし者でなければ入ることが出来ないのではないかと、

 光祐は推測する。


 それ故に榊原の血筋を受け継ぐ祐雫を伴えば、

 必ず、神の森へ行き付くことが出来るように思えた。


 それでも、光祐は、祐里と幽かながら、こころが通じている感があり、

 離れていても、祐里の存在が感じられた。


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