◇桜ものがたり◇

「父上さま、祐雫も信じます」

 祐雫は、唇をぎゅっと噛み締めながら、

 真剣なまなざしで、光祐を見つめる。


「祐雫は、母上さまが留守にされても大丈夫だと思っていました。

 お婆さまや婆やがいらっしゃるし、

 お爺さまと大好きな父上さまが、いらっしゃるのですもの。

 でも、母上さまが、いらっしゃらない毎日が淋しゅうてなりません。

 それに優祐が、いないと身体の半分がなくなったように感じます」

 祐雫は、祐里の存在とともに、双子である優祐の存在を意識した。


「神の森に祐里が必要な以上に、

 桜河の家には、祐里が必要なのだから、

 必ず祐里と優祐を連れて戻ろう」

 光祐は、優しい微笑を湛えて、力強く祐雫を見つめ返した。




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