◇桜ものがたり◇
十七時間かけて、緑が原駅へ列車が到着した。
無人駅は、ひっそりと静まり返り、
駅舎の外には、青々とした田園が広がっていた。
その間を真っ直ぐに神の森へと続く道が伸びている。
「どうやら、あの遠くに見える森のようだね」
光祐は、祐雫を気遣いながら、炎天下の陽炎が揺れる道を進んでいく。
田園の稲の緑が、眩しく光り輝き、陽射しを遮るものが何もない
乾ききった道が長く続いていた。
歩けど歩けど、神の森までの距離は、一向に縮まる気配が無く、
幾筋もの汗が流れた。
蒼い空は、どこまでも青く、
光祐と祐雫に容赦なく直射日光を照らし続けた。