◇桜ものがたり◇

 次第に樹木で蔽われていた前方が、

 僅かに小径(こみち)となって開けてくる。



 ◇◇◇神の森へようこそ、祐雫。

 後ろの者は、何故入ってこられたのじゃ。

 ここは神の森じゃ。

 余所者が来るところではない◇◇◇



「神の森さま、わたしは、父上さまとご一緒に

 母上さまと優祐を迎えに来たのでございます」



 ◇◇◇祐里は、神の子じゃ。誰にも渡さぬ◇◇◇



 大風が巻き起こり、光祐と祐雫を取り巻いた。


 光祐は、祐雫を庇って抱きしめる。

 光祐と祐雫は、大風に巻き込まれて、瞬く間に舞い上がり、

 遠くへと飛ばされ、投げ出される。



 奥深い森の中に投げ出された光祐は、意識を取り戻すと、

 身体を打ち付けた痛みに耐え、ゆっくりと起き上がって、辺りを見回す。


 奥深い森は、針葉樹の樹木で覆われて、

 薄暗くひんやりとした空気に包まれていた。



< 262 / 284 >

この作品をシェア

pagetop