◇桜ものがたり◇



 ◇◇◇何故じゃ。

この結界を余所者が打ち破るとは・・・・・・

おまえは何者◇◇◇


 神の森は、容赦なく光祐へ棘の痛みを放ち続けた。



「わたしは、祐里の夫です」

 光祐は、やつれた祐里の姿に涙を流す。


 神の森から受ける痛みなど、祐里をこのような目に合わせた

 後悔の念からすれば、大したことではなかった。

 光祐は、祐里をみつめ、その軟らかな唇にくちづける。


 愛を込めて祐里に魂を吹き込むように唇を吸う。


 そのうちに祐里の冷たい頬に赤みが差してきた。


 祐雫は、光祐の側に寄り添って、夢中で、祐里の左手を握り締めていた。


(父上さまは、いつでも、優しく見守るお方だと思っておりました。

 これほど激しい感情を顕わにされる父上さまを

 はじめて拝見いたしました)


 祐雫は、光祐の力強い愛に驚きながら、感動して身震いしていた。




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