◇桜ものがたり◇
優祐は、社(やしろ)の中で、見えない蜘蛛の糸に、捕らえられていた。
昨夜から祐里が行方知れずになっていたので、
探しに出ようと扉に手をかけた瞬間、
見えない蜘蛛の糸に絡まれて、 動けなくなってしまった。
もがけばもがくほどに蜘蛛の糸は、優祐を捕らえて離さなかった。
仕方なく優祐は、社(やしろ)で、祐里の無事を祈っていた。
祈りが通じたのか、懐かしい気配が近付いてくるのを感じた。
「祐雫、ぼくはここだよ。
父上さまもご一緒なのですね。
父上さま、母上さまをお守りください」
優祐は、こころの中で懸命に、声援を送った。