◇桜ものがたり◇
東野籐子は、三年ぶりに会う光祐さまに大層上機嫌で、
更に祐里のことで、一人娘である奥さまが、戻ってきていることに、
内心喜んでいる。
「光祐さん、祐里さん、今夜は、薫子さんと一緒にお泊まりなさいな。
父上さまは、おひとりで、頭を冷やされるとよろしゅうございます。
それに御爺さまも、お仕事から戻られましたらお喜びになられますもの」
籐子は、血の繋がらない祐里を三人目の孫として、
光祐や萌と変わりなく、愛(いつく)しんでいた。
「ありがとうございます。おばあさま」
光祐は、籐子が味方についてくれたことを心強く感じた。
「萌も、光祐お兄さまと祐里さまがいてくださると楽しいもの」
光祐さまと萌は、籐子の両隣に座り、
祐里は、籐子の肩を優しく揉んで差し上げる。
祐里は、籐子が光祐さまや萌と同じように接してくれることに
感謝と喜びを感じていた。
光祐さまと祐里は、祖父の東野圭一朗と伯父の東野香太朗が仕事から帰り、
皆と一緒に夕食をご馳走になる。
東野邸を味方につけて、光祐さまと祐里は、迎えにきた森尾の車で、
桜河のお屋敷へと帰った。