◇桜ものがたり◇
光祐さまの誕生・大学入学祝いの盛大な宴が終わった。
大勢の招待客を見送った後、
光祐さまと祐里は、バルコニーで静かに寄り添い、
春の匂いに包まれた庭を眺めている。
「ぼくは、これからも桜の樹に誓って、必ず、祐里を守るからね」
光祐さまは、縁談が白紙に戻されて、安堵している祐里の瞳を
真剣なまなざしでみつめる。
「ありがとうございます。
私は、光祐さまを信じてついて参ります」
祐里は、はらりと嬉し涙を流し、光祐さまの胸に顔を埋めた。
光祐さまは、優しく祐里を抱きしめる。
桜の蕾が、二人を祝福して、微笑むかのように、ふっくらと膨らんだ。