◇桜ものがたり◇

「姫は、不思議なひとだね。

 初めて話すのに以前からの知り合いのように安心する。

 一緒にいるだけでしあわせな気分になるよ。

 ぼく的には、姫を解剖して分析してみたいな」

 柾彦は、大袈裟に顕微鏡を覗く格好をして、祐里の顔を覗く。


「お医者さま的なお考えでございますのね。

 心の中まで見透かされているようで恥ずかしゅうございます」

 祐里は、恥ずかしげに制服の上から胸を押さえて隠した。


 そのしぐさに柾彦は、ますます好感を持ち、愛おしさが込み上げる。


 祐里の席には、次々に洋菓子と飲み物が自己紹介と共に届けられた。


 祐里は、にっこり笑って、御礼の言葉を返す。


 柾彦は、祐里の横にいて、他の男子学生との会話を仲立ちして、

 より楽しくさせていた。


 祐里は、少しずつ柾彦に打ち解けていった。

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