◇桜ものがたり◇
「姫の兄上さまにも会ってみたいな」
柾彦は、祐里のこころを夢中にしている光祐さまを自分の目で、
確かめたいと思う。
「もうすぐ夏の休暇でお帰りになられますわ。
柾彦さまとは、意気投合なされると存じます」
祐里は、光祐と柾彦が親しくなることを望む。
「兄上さまにお会いできる日が楽しみだよ」
柾彦は、祐里と共に遠くの光祐さまに思いを巡らせた。
晩餐会が散会して、祐里が結子へお別れの挨拶をしている隙に、
柾彦は、奥さまへ文彌との経緯を告げた。
「また、祐里さんに近付いてくると思いますので、気を付けてください」
「まぁ、そのような事がございましたの。
ご忠告、ありがとうございます」
奥さまは、無垢に微笑む祐里を心配して見つめ、
女性として、今まさに蕾が開こうとしている祐里の色香に気付かされる。
それと同時に、尚更、好青年の柾彦に好感を持った。