◇桜ものがたり◇
次の日曜日。
鶴久結子と柾彦は、桜河のお屋敷のお茶会に招かれ、
土産に桜の挿し木を持ち帰る。
その桜の挿し木は、鶴久病院の庭で見事な枝を広げることとなる。
それとともに、鶴久病院は、大きな病院となり、
ますます医療を発展させていった。
夏の休暇に入り、
お屋敷に帰省した光祐さまは、祐里から柾彦を紹介された。
祐里に優しいまなざしを向ける柾彦に対して、
光祐さまは、弟のような既知の親近感を抱いた。
柾彦は、光祐さまの隣にいる祐里が一段と美しく、
それでいて寛いでいるのを実感し、
祐里の胸の内の光祐さまの絶大なる存在感を思い知る。
光祐さまに会うまでは、
祐里の相手として自分にも可能性があるのでは……
と、考えていたのだが、柾彦の恋心は瞬時に打ち砕かれる。
光祐さまは、夏の休暇中、事ある毎(ごと)に柾彦を誘って、
祐里と共に三人で楽しい時間(とき)を過ごした。
柾彦は、複雑な想いを隠しつつも、
それ以来、光祐さまを兄のように慕い、
末永く二人の交流は続くこととなる。