ファニープリンス
「だって、本当馬鹿でしょ?」
「…そう、何度も言わなくていい」
わかってることだし、と可愛くない言葉を呟いてふくれる。
さっさと戻って楓夏と話してればいいのに。
こんな惨めな気持ち、もう感じたくないもの。
「いい加減素直になってよ」
「っ?!」
すると、しゃがみこんで俯く私の背が、唐突に温かいものに包まれた。
目を見開くより先に、前で組まれた長い腕の力が強くなって、何もいえなくなる。
「空気読んでくれるのはありがたいけど、
君に風邪をひかれるのはありがたくないんだよね」
抱きしめ、られてる…。
立花に。
「震えてるし冷たすぎ」
立花が喋るたび、振動がじかに伝わる。
固い胸板も、柔らかい髪も密着して。
私の速い心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかって、不安になるくらい。