ファニープリンス
そんなブラックオーラに慣れている私は、珍しく寝癖のあるそうちゃんの
ブラウンの髪を見ていると、彼は諦めたように溜息を吐いて椅子にもたれた。
手に持った新しいカルテをポンッとデスクに投げて、長い足を私の膝に乗せてくる。
「わざわざ看護師も誰もいねー時に忍んで来れる能力あるんだったら、男を夜這いしろ夜這い」
「……そうね」
「おう。だろうよ…………っおい?!」
「ん゛?!」
すると何に驚いたのか、そうちゃんは唐突に大声を上げて私の両頬を手で挟みこんできた。
痛い!!頬が痛い!!
「お前熱あるんじゃねーの?!」
「なひはほ!!」
「いーやある!!だって、俺のくだらねえ冗談に頷くとか、普段ありえねえだろーが!」
まあ確かに、いつもは無視する。
立花並にセクハラ発言してくる年上の幼馴染だけれども。
今日は別にただ会いに来たわけではない。
そうだ、忘れてた。
そうちゃんに頼みごとがあったんだった。