ファニープリンス
その瞳は、どこか揺れていた。
ぐらり、ゆらり。
まるで、悲しんでいるような瞳をしていた。
「嘘はいけねーだろ?嘘つきは泥棒の始まりって言うのって知ってるか?」
「誰に言ってるのよ。私24だけど。小学生じゃないけど」
けどすぐにいつもの調子で笑い飛ばすそうちゃん。
気のせいだったのかな…?
「ま、嫌だったのかな」
「え?まあ確かにそうちゃんのことは嫌だけど」
「おい、まじでてめえ犯すぞ」
手を温めていたココアをとられて、その鋭い瞳で睨まれる。
でもすぐにため息をついて、「ちげーよ」と小さく呟いた。
「お前が合コンに参加すんの、いやだった」
「………、」
「俺以外の男に触れられるのか、と思うといやだった」
「………、」
「…ただ、それだけだ」
だから、あんなことをした?
それは聞けなかった。
次に言われる言葉が怖くて。
本当に、無性に怖かった。