ファニープリンス
「なんで出て来ちゃうのよ」
冬の外気で冷たくなったコンクリートに座ってそう呟けば、
立花は表情を変えないまま言った。
「だって、楓がいないと緊張するから」
結局はそっちね!!
まあわかってるけれど。
「へタレ」
「じゃあ楓は寂しがり?」
「誰が!」
本当は寂しい。
立花はいっつも楓夏ばかりしか見てないし。
こうやって来てくれても、理由は奴がへタレだからってことも。
「楓って、本当素直じゃないよね」
「っ?!」
真っ暗な地面を見ていると、唐突に奴の長い指が目の前に現れた。
体を強張らせて目を瞑ると、立花の爽やかな香りが鼻を掠め、すぐに消えた。
???
「寂しくて泣いちゃった?」
目を開けると、指に雫をのせた立花が意地悪気に笑っていた。
「ほわわわっちっ違う!!こっこれは…あ、汗!!」
「今日の気温は何度だっけ?」
「え?確か3度……サンドウさんが50度だと言ってました」