きみの王子様になりたかった
国民的アイドルグループSUBARUの握手会はファンクラブ会員でもなかなか当たらないということで有名だった。
それが当たったことは友人と私を舞い上がらせるには十分な出来事だった。
彼らまであと数mというときには、私たちは既に有頂天だった。
「やばいやばい、もう少し!」
「あぁ、生のKOUKIだぁ!」
お目当てのKOUKIから私は目が離せない。
「次の方どうぞ」
誘導の声に大喜び。
ついにKOUKIと会える。
「こんにちは」
笑って微笑むKOUKIはまるで王子様。
私は、震えながら手を握った。
ごつごつしているけれども、すべすべ。
アイドルって、誰もがこうなのかしら。
「すごく…ファンなんです!」
「えぇ、知ってますよ」
僕はあなたを知っています。
「桜庭ナナさん」
「えっ」
なぜ、私の名前を…
彼は悪戯っ子のようにクスクス笑い、耳元で囁いた。
「僕はあなたを6年間見てましたから」
混乱する私の手をするりと撫でる。
まるで愛でるようだ。
名残惜しい、というように。
「今度はあなたを離しません」
魔法のような時間は、夢のように去った。
薬指の指輪が消えていることに気づいたのは、
アパートの前で鍵を探したときだった。
それが当たったことは友人と私を舞い上がらせるには十分な出来事だった。
彼らまであと数mというときには、私たちは既に有頂天だった。
「やばいやばい、もう少し!」
「あぁ、生のKOUKIだぁ!」
お目当てのKOUKIから私は目が離せない。
「次の方どうぞ」
誘導の声に大喜び。
ついにKOUKIと会える。
「こんにちは」
笑って微笑むKOUKIはまるで王子様。
私は、震えながら手を握った。
ごつごつしているけれども、すべすべ。
アイドルって、誰もがこうなのかしら。
「すごく…ファンなんです!」
「えぇ、知ってますよ」
僕はあなたを知っています。
「桜庭ナナさん」
「えっ」
なぜ、私の名前を…
彼は悪戯っ子のようにクスクス笑い、耳元で囁いた。
「僕はあなたを6年間見てましたから」
混乱する私の手をするりと撫でる。
まるで愛でるようだ。
名残惜しい、というように。
「今度はあなたを離しません」
魔法のような時間は、夢のように去った。
薬指の指輪が消えていることに気づいたのは、
アパートの前で鍵を探したときだった。