お風呂上がりの望遠鏡
二度とこのグラスじゃ、飲めないと思っていた。
(あっ、おいしい)
大学の時からだったから、10年以上の付きあいだった。
結婚するものと思っていた。
っていうか、他の選択肢は全く用意していなかった。
余裕があったから仕事も頑張れたし、張り合いがあったから、毎日が充実していた。
あの日、彼の言葉は冗談だろうと思った。
本気だとわかった時、考えたことはやり直す方法だった。
別の人の陰が見えても、それでも、高をくくっていた。
すぐに、よりを戻しにやってくるだろうと信じて疑わなかった。
だからこそ、引っ越しもせずにずっと待っていた。