お風呂上がりの望遠鏡
 
「こんなとこに立ってないで、あそこに座ろうよ」

押領司クンは待合室のベンチを指さした。

加奈ちゃんはチラッと押領司クンの方を見たが、避けるように歩き出した。

そして、私の横も通り過ぎる。

「ちょ、ちょっとぉ・・」


見送った私の横を今度は押領司クンが大股で通り過ぎていく。

追いついた、と思ったのに、押領司クンったら、追い越してるし。

加奈ちゃんも負けずに追いかけてるし。


何あれ。


追い越されないようにジグザグに歩く押領司クンも、必死で追いかける加奈ちゃんも楽しそう。



いつの間にか、二人は笑い声に変わっていた。


 


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